ウェブ制作などを小規模でおこなっている企業として、意外に頭を悩ませるのが「オフィスをどうするか?」という問題。僕らもまだ2名という零細企業としてやっているのですが、やはりオフィスについては結構色々と考えました。
現在は、約6ヶ月間利用したコワーキングスペース「co-ba shibuya」を出て、ふつうのデザイナーズマンションを事務所として利用しています。事務所としても利用できる普通のマンションで、コワーキングスペースからここに拠点を移動してから約1年が経ちました。
▼会社を移転した当時のブログ記事
参考 鹿児島市に新事務所ができました!ラキブラブログ - Lucky Brothers & co.今回は、1年間事務所を借りて営業活動をしてみた経験から、コワーキングスペースと比較して、少数の(2〜5名程度)のウェブ制作会社が事務所を自ら借りた場合のメリットとデメリットをまとめてみようと思います。
これから、コワーキングスペースを借りるか、事務所を借りるか検討中の方の参考になれば幸いです。
目次
小規模なウェブ制作会社が事務所を構えるメリット
まずは、メリットから紹介したいと思います。
1.社外の人との打ち合わせが遥かにラクになる
コワーキングスペースから自分たちだけの事務所に移って、いちばんインパクトが大きかったのがこの点でしょう。
僕らが利用していたコワーキングスペースは、打ち合わせスペースが2つあり、それを利用者全員でシェアするという形で使われていました(時間は、500円/1h)。
1時間あたり500円払うというのがそもそも面倒でしたし、仕切られているとはいえ、他の利用客がいるなかで案件の打ち合わせなどをするのは、すこしストレスに感じていた部分もありました。
それが、自らの事務所を構えると、そうした打ち合わせにまつわるストレスは解消されましたし、「じゃあ、一度来てくださいよ」と気軽に打ち合わせできる環境ができました。
周りの人や時間を気にせず打ち合わせできるというのは、それだけで大きな価値を持つことが実感しました。
2.進行中の制作物やそのやり取りにおいて、周りを気にしなくていい
特に広告系の制作案件の場合、その取り扱いはとてもシビアなものになります。
サイトローンチまで、もちろん関係者以外に漏れてはなりませんし、そうした情報に関わる秘密保持は徹底しなければなりません。
とはいえ、コワーキングスペースの場合は、ひとつのスペースをシェアしているので、他人の作業中PCの画面が見えてしまうこともあります。広告案件に限りませんが、そのような環境はやはり良いとはいえません。できれば避けたいものです。
事務所を構えると、そのような不安材料もなくなります。コンプライアンス的なリスクが排除できる、というのは事務所を構える意外なメリットと言えるでしょう。逆にいうと、コワーキングスペースのデメリットともいえますね。
3.備品や書類の管理が格段にしやすくなる
僕らが利用していたコワーキングスペースの場合、オプションで月額1,500円程度支払うことでロッカーが使用でき、そこにある程度の書類や備品などを置いておくことができました。
けれど、やっぱり想像通り、ロッカーって限界があります。ちょっとしたファイルと本を数冊置いておくともういっぱい、といった感じなんですね。
なので、普段作業するコワーキングスペースにはあまりモノはおけず、メンバー自宅や、レンタル倉庫などで管理する必要が出てきます。これも、コワーキングスペースを利用するうえで、じわじわとストレスになってきます。
何しろ、会社の謄本や通帳など、自宅で管理するのもリスク(紛失や盗難)が高いので、できることなら個人の手元に置いておきたくありません。そういう意味でも、会社に置いておきたいものですよね。
借りている物件の広さにもよりますが、モノを自由自在に置ける環境というのはとても助かるなと思います。
4.会社のカラーが出しやすい
どちかというとこれは副次的な効果ですが、会社として事務所を借りると、コワーキングスペースを借りている場合より、その会社のカラーが出しやすいといえます。
物件そのもののデザインから、オフィス家具、部屋に置くさまざまな備品など、こだわろうと思えば、いくらでもこだわることができます。
その自由度があるので、会社のイメージを打ち出しやすいのです。それなりにコストがかかるのも事実ですが、「自分たちの城」のような環境を作り上げたい人にはうってつけだと思います。
小規模なウェブ制作会社が事務所を構えるデメリット
次に、逆に発生するデメリットを紹介します。
1.事務所の維持、管理、運営コストが想像以上にかかる
事務所を営んでいくのは、とにかくコストがかかります。これが、確実に最も大きなメリットといえます。正直、借りる前に想像していたよりはるかに多くのコストがかかるな、という印象した。
また、コストは毎月の賃料などの金銭的コスト以外にも、部屋を管理するコストもかかります。わかりやすくするために、部屋を借りることでかかるコストについて、金銭的なものと非金銭的なものに分けて列記してみたいと思います。
金銭的コスト
- 毎月の賃料(数万円〜数十万円)
- 公共料金(水道、ガス、電気)
- 通信費(電話、ネット料金)
- 家具代(イスや机といった家具)
- 備品代(掃除用品、コピー用紙、トイレットペーパーや洗剤などの消耗品、お客様用の飲み物代など)
非金銭的コスト
- 物件の契約周りの労力(コワーキングスペースは工数が少なく比較的スムーズに済みます)
- 事務所の掃除
- ゴミ出し
- 備品の管理
あたり、でしょうか。もう少し細かいものはいくらでもあるのですが、代表的なものはこんなところだと思います。
実際に借りる前は、「毎月の賃料」「掃除」くらいは想像できていたのですが、それ以外の部分についても会社として負担しないといけないということに気づき、「こりゃ、大変だぞ……」と。
もちろん、清掃などはアウトソースしてお金で解決すればいい話ではあるので、そのあたりは財布と相談してください。
事務所を借りると、コワーキングスペースのコスパの高さに驚く
逆説的ですが、事務所を借りてみると、コワーキングスペースはめちゃくちゃコスパが高いことに驚きます。
利用料もせいぜい1人数万円程度ですし、掃除も勝手にやってもらえます。また、電気、水道、ガスといった公共料金ももちろん無料で使い放題ですし、ネットも使えます。
また、コワーキングスペースによってはコピー機や自販機など、周辺設備も整っており、少なくとも個人〜数人の企業レベルで揃えておくべき機能はすべて揃っています。
これは本当に、コワーキングスペースを離れてみてから気が付きました。失って分かる大事さ、というやつです。コワーキングスペースはその料金のなかに、「場所代」としての料金以外の部分が多分に含まれていることを、利用者は自覚しておいた方がいいんじゃないかなと思います。
2.他者や外部スタッフとの交流が生まれにくくなる
コワーキングスペースの強みは、「コワーキング」というだけあって、様々な人が集まり、出入りし、働く場であるということです。
そこから、人との交流が生まれたり、ただ雑談をしてリラックスしたり、場合によってはプロジェクトが発足したりなど、コワーキングスペースだからこそ得られる価値というものがそこに詰まっています。
実際、僕らが利用していたコワーキングスペースでは、定期的にイベントやランチ会なるものが実施され、会員どうしの交流もそれなりに活発でした。一緒に仕事をする、までいかなくとも、案件内でのちょっとした困り事を相談させてもらったこともありますし、多用な職能を持った人が集う場として、そのポテンシャルは十分に活かすことができます。
また、特に小さい規模の会社となると、特定の職能を持った人の数は限られてくることでしょう。そんなとき、ある程度会員数が多いコワーキングスペースなら、1人や2人は、その道のスペシャリストがいる可能性が少なくないので、周りの人に相談できるという強みはありますね。
一方で、事務所を構えてしまうと、意図して開放しない限りそうした交流からは遠ざかってしまうでしょう。その点は、デメリットと言えるかもしれません。
さいごに
零細ウェブ制作会社が、コワーキングスペースではなく自分たちで事務所を借りる場合の、メリットとデメリットを整理してみました。
正直なところ、「ウェブ制作会社」特有のメリット/デメリットは、そんなにないかなという印象です。なので、結構一般論としての面が強くなりました。
数的にはメリットの方が多いですが、「維持、管理、運営コストがかかる」というデメリットがかなり大きいので、一概には言えない結果となりました。
強いて言うなら、「自分たちの事務所がほしい!」という気持ちの強さが、意外に重要です。もしそういった気持ちが一切ないなら、人数次第ではありますが、コスパ重視のコワーキングスペースの方が利は大きいんじゃないかなと思います。
会社の一期目が終わりました。
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