普段の読書量は人並み(年間100冊くらい)かそれ以下かなと思うのですが、最近読書について新たな学びを得ました。
個人的なプロジェクトとしてのラジオや会社でも新たなサービスを立ち上げていて、新たな視点がほしい、なにか他者のヒントを得たいという状況は常に発生します。
『星野リゾートの教科書』という本で、星野リゾートの星野佳路社長は「たいていのセオリはーは、過去の本にすでに書いてある」という思想のもと、そうしたセオリーに則って意思決定を行う「教科書的経営」を行っていると明かしています。
これは星野リゾートのような規模の大きい企業や事業組織だけにとどまらず、僕らのような風が吹けば飛ぶような小さな会社でも、同じようなシチュエーションで書かれた本がこの世にはいくつもあり、同様のことがいえます。
「置かれている状況と、本の内容がぴったり合ったときに、そうでない場合と比較にならないくらい学びがある」ということに最近気づきました。
目次
同じ本でも、読む状況によって理解度・共感度が何倍も違う
たとえば、「どんなときでも、顧客ファーストをつらぬけ。自社の利益、その他ステークホルダーとの関係性など要因はいくらでもあるが、とにかく顧客を最優先とすることが重要」、みたいなことが本に書いてあったとします。
あくまで、たとえ話です。
それを、創業して間もない頃やサービスを立ち上げたばかりで顧客がまったくついていない頃に読んだとすると、「うんうん。あぁ、たしかにそうだな。顧客、大事やな」くらいには響くと思います。
もちろん、それが重要であることはわかる。そういうシチュエーションがきたら、ぜひともそのスタンスを実践したいとも思います。
一方、同じ本を読む場合でも、「顧客ももちろん大事にしないといけない、けれど従業員のことは? 取引先の各社の担当者への負担は?」という問題にまさに直面しているときはどうでしょう?筆者が語る状況の理解度と意見への共感度がまったく違うので、響き方がぜんぜん変わってくるんじゃないでしょうか。
要は、前者の場合は想像の域を超えておらず実際のアクションにリンクしにくいのですが、後者の場合は想像ではなく、まさに自分の周りで起きている現象と照らし合わせることができる、ということ。つまり、本の読み方の解像度がぜんぜん違うというわけですね。
高い解像度で解釈できているので、事象を抽象化し転用できる
「いやいや、本で書かれてある内容も自分とは関係ない世界で起きていることだから、それを応用できるかは別問題でしょ!」と思うかもしれませんが、まったくそんなことはなくて。
高い解像度で本の内容と向き合うことができていれば、その具象を一旦抽象化して、自分が抱えている問題に転用するのは、案外むずかしくないのです。
うまくいかなかったり、結局参考にしきれない、というのは解像度が低い時点でそれを試みようとするからです。
本からのインプット、行動によるインプットをうまくリンクさせる
上記のように、本からのインプットをうまく活用するためには、「本からのインプット」と「行動によるインプット(または状況そのもの)」をうまくリンクさせることが必要になってきます。
つまり、「走りながら考える」ような状態です。
本からのインプットや行動によるインプットのどちらが欠けてもだめで、どちらも両輪で回すことで、リンクした良質なインプットが得られ、結果的に密度の高い、良質なアウトプットが得られるのだと思います。
「行動することで視点が変化する」
とても好きでよくエッセイを読んでいる森博嗣さんのエッセイ集『道なき未知』では、森博嗣さんが趣味の鉄道模型工作の際に図面をあまりちゃんと書かない理由として、
慣れてくると、図面なしで作れるようになる。また、作れば、もっと複雑な設計ができるようになる。両足で歩くように、設計と製作は交互に前進する、という感覚を僕は日頃抱いている。
これはつまり、思考があってこそ行動があるし、一方で、行動することで視点が変化し、また別の思考ができるようになる、という効果だ。
と書いてます。
つまり、行動することと、頭で考えたり知識を入れて準備するのは、どちらかを適用に切り上げてバランスよくやっていくほうが結果的にいいことがある、ということなんだと思います。
たしかに、これは最近よく痛感していることで、ぐーっとアレコレ悩んで出した結論に基づいて実際にやってみると、想像とはまったく違う結果が出てきたりして「なんだ、これそんなに悩むことなかったじゃん」と杞憂に終わる、ということに何度も遭遇しました。
まったく新しいことをはじめるときこそ、この視点は忘れないようにしたいと思います。
最後に
だから、読書において意外に大事なのは、「いい本をたくさん読む」とかそういうことではなく「自分の状況にあった本を選び、読む」ことなんだと思います。
読書観については人それぞれあっておもしろいので、ぜひみなさんの意見も聞いてみたいです。ではでは。
関連書籍はこちら
星野リゾートの星野社長による「教科書的経営」を解説した本。経営上のあらゆる問題と、それに対応できる本を対にして紹介している。
森博嗣さんの新刊のエッセイ集。テーマは特になく、そのとき森さんが気になっていること、考えていることがつらつらと書かれている。全48編。具体⇔抽象の往来が見事。
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