12月10日(日)、鹿児島県の長島にある諸浦島でおこなわれた「第0回 Shoura Jazz’o」というイベントに参加してきました。
会場は2015年に廃校となった、島で唯一の小学校・本浦小学校です。
そもそも長島が鹿児島県の最北端に位置しており、そのなかでも特に北の地域にある諸浦島は、鹿児島市から車で約2時間30分くらいかかる場所にあります。
「長島の諸浦島」なので離島なのかと思いきや、橋で鹿児島県本土とつながっているので、船に乗る必要はありません。ここがちょっとややこしい。
Jazz’o(じゃっぞ)って?
このイベントを企画し立ち上げたのは、COCOROMISOという味噌を作っている石元淳平醸造の石元淳平さんという方。
石元さん自身が諸浦島の出身で、本浦小学校も彼の母校なのだそう。
その本浦小学校が2015年に廃校になったことで、島で唯一の小学校の行事ーーすなわち、地域住民にとっての唯一の行事ーーがなくなってしまいました。
そんななか、「なくなってしまった小学校の運動会の代わりに、廃校となった校舎を使って代わりとなるイベントをやろう!」という思いがきっかけで企画されたのが、このJazz’oというイベントなのです。
今、この島でずっと生きている僕らの日々の暮らしが、この島の未来を作るんだ。
島での日々の暮らしや、島の歴史や先人たちから受け継がれてきたものを大切にしよう!
なくなってしまった運動会の代わりにフェスを始めよう! 諸浦島を文化や音楽のある楽しい島にしよう!と考えました。
「Shoura Jazz’o」という名前は、地元の言葉で「諸浦だよ!」という意味が込められています。
また、島民に聞いたところ「Jazzがいいよね」ということで、それらをかけ合わせてこのタイトルになったのだそう。
「Shoura Jazz’o」フォトレポート
イベントに参加しながら、会場の様子を先日買ったばかりのGRⅡで撮影してきたので、写真とともに感想を綴っていこうと思います!
関連:僕がミラーレス一眼から、RICOH「GRⅡ」に買い替えた理由。
会場入口のベンチに置いてあったヘルメット。おそらく、小学校の生徒が所属していたチームのものでしょうね。
体育館のそばのようす。右の板は逆上がりの補助具っぽいですが、左の器具はなんだろう。
サッカーボールを蹴り込むと、鉄製のガイドの中を通ってまた自分のところに戻ってくる、的な練習器具なのかな? これは見たことがない。
いわゆる「便所スリッパ」。校舎には、こうした日用品がちょこちょこと落ちており、3年前とはいえ廃校したという事実を見せつけられます。
鉄棒とかもちゃんとあります。
こちらは、学校でよく見るタイプのストーブ。ハードルを両脇に立ててガードの代わりにしています。
そういえば、長島はけっこう普通に寒くて、当日会場付近もかなり冷え込んでいました。
メイン会場となる体育館の外の様子。
テントで覆われているスペースには簡易的なテーブルとイスが用意され、そこで飲食ができるように設営されていました。ずっと立ちっぱなしはつらいので、これは嬉しい。
メーン会場となる体育館ではプログラムが組まれ、さまざまな演目が披露されるなか、外はこうして和気藹々と食事できるような雰囲気になっていました。
信じられないことに食べ物の写真をほとんど撮っていないのですが、この反対側では日本一の生産量を誇る長島の鰤汁と、焼き芋が無償で振る舞われていました。
そのほか、焼いた貝や、ジャークチキン、たい焼きなど、地元の方々が飲食ブースも出店されており、食べ物には事欠かない感じ。
もっとちゃんと写真撮っておけばよかった……
出店していたのは食べものだけではなく、おしゃれな食器のセレクトショップや、ドライフラワーなどを扱う花屋、コーヒーショップ、シルクスクリーンプリントができる雑貨屋、美容室……、などなど体育館内では多様なテナントが出ていました。
こちらは雑貨屋。設営がすごい大変そう。出店しているテナントが軒並みおしゃれで、イケてるお店が多くてびっくりしました。
体育館中央部に設置されていたテーブル。
後に音響設備が整えられ、最終的にはステージと化しました。鹿の角とか古びたトランクケースとか、イチョウの枯れ葉とか、ここだけ明らかに異様な雰囲気が漂っていました。
鰤の解体ショー。地元の漁師さん?漁協の方?(すみません、ちょっとわからず。。。)が、まるごと1匹の鰤を目の前で解体し、その切り身を振る舞ってくれました。
こうやってみると「意外とカンタンそうだな……」と思うんですけど、やってみると全然できないんだろうなあ。鰤の刺身はもちろんウマかった。
館内はDJのおかげで常に陽気な音楽がかかっておりました。
近寄って見てみると、校長先生が話すやつの上にターンテーブル! こういう使われ方をしたの、史上初なのでは?
プログラムの終盤は、アイリッシュミュージックバンドのJohnJohnFestivalとThe Honest(こちらは鹿児島のバンド)が共演し、めっちゃいい感じの雰囲気に。ここであのステージが役に立つ!
途中、勢いの激しい曲の演奏時には周辺にいたオーディエンスがみんなで手を繋いで輪になって踊る場面もあったり、演奏の力で会場はかなり盛り上がりました。
最後は、本浦小学校の校歌斉唱でフィナーレ。なかなかエモい展開で幕は下りました。
長島の気鋭のラッパー・SAWANEMも参戦していました。
彼ともいろいろお話しましたが、なぜ花が刺さっているのかは、結局わかりませんでした。
最後に
このイベントで特に印象に残っているのは、料金設定です。
島外民は参加費1,500円かかるのに対して、島内の住民は参加費無料。
これには、最初に記載した発起人・石元淳平さんの「なくなってしまった島の行事・文化を復活させよう」という思いが込められているのを感じます。だから、島の住民は無料なのです。
また、最後のJohnJohnFestivalとThe Honestとの共演時の盛り上がりは凄まじく、いち参加者として「なにかすごいことが起きているような気がする」と、なにか胸の奥がざわざわするような、そんな感覚を覚えました。
島の未来を本気で作っていきたいと考える大人の勇気と実行に、「エモい」とかそういう感情を超えた感動がありました。
「小学校がなくなる」ということ
そうしたポジティブな気持ちと同時に、時間が経つにつれ、じわじわと「小学校が廃校になる」ことの事実の重さが襲ってきました。
このイベント含め、今でこそ廃校を活用したプロジェクトはさまざま立ち上がっていますが、そもそも「廃校」って地域住民にとってすごく大きな出来事なんです。
「行事がなくなる」とか「子どもが別の地域に行かないといけなくなる」といった問題はもちろんありますが、何より、小学校が廃校になるのって「この地域には、もう未来がない」と言われているようなものなのです。
……いや、実際にそうなったらどう思うかはわからないですが、僕が同じ立場になったらそう感じてもおかしくないなと。
でも実際、そこに人はまだ向こう数十年は住み続けるわけだし、「未来がない」なんてことはありません。人々の営みは残り続けるし、子どももいる。未来は、ある。
そこに生まれたギャップが、今回のような奇跡的なイベントを生んだのだなと。僕はそう受け取りました。
このイベントは第0回ということで、年1回のペースで開催されていくことと思います。また、来年も同じようにこの奇跡を見届けられたらいいなと思いました。
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「1通の招待状」だけで、往復6時間もかけてイベントに参加した理由。
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